誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
部屋に入るなり、中島は鎌首をもたげた蛇のように敬の首に腕を巻きつけてきた。
「中島さん、こういうことは困ります」
敬は中島の腕を振りほどくと、冷めた目で言い放った。
「あら?こんなとこへ連れ込んどいて、今さら困ります、はないんじゃない?」
「ここに入ったのは、手っ取り早くあなたの本性を見るためです。あなたに手を出すつもりなんてありません。わたしは仕事とプライベートは切り離す主義ですから」
「じゃあ、若松彩とはどうなの?」
えっ。
中島の放ったその名前は、冷静沈着だった敬を一瞬たじろかせた。
「い、いや、別に…そういうことでは…」