誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「ウフフッ、しらばっくれてもダメよ。大学時代のテニス部の先輩で…あなたの憧れの人だったんでしょ?」
「……」
「彼女、婚約者に逃げられたことが噂になって、とうとう前の会社にいられなくなったらしいじゃない」
「何であなたがそんなことを?」
「そんなの、ちょっと調べればすぐにわかることよ。
まさか本気じゃないんでしょ?それなら、そっとしておいてあげたら?
彼女、もう微妙な年だし、また捨てられたら、手首くらい切るかもよ。アハハハハッ…」
「あなたには関係のないことでしょう」
中島は敬の背後に回り、その大きな背中に右頬を押し当てる。
「あなたはまだ若いんだし、そんな重たい女、面倒でしょ?
あたしなら、バツイチだし、子持ちだし、結婚なんて大それたこと考えないわ。ただ、大人のおつき合いをしましょうよ。
…あたしがホテルに無理矢理連れ込まれたって言ったら、あなたの上司は何て言うでしょうね」