誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
胸がじんわりと温かくなったのも束の間、一人ホテルの部屋に帰った彩は、現実に押し潰されそうになる。
今夜はもう、この部屋に中島は帰ってこない。
そして、敬も…
数時間前の記憶が蘇る。
去っていく二人の後ろ姿。
こちらを振り返り、勝ち誇ったようにニヤリと笑った中島の顔。
……はぁ。
やる方なく部屋着に着替え、ブラのホックをプチンと外した途端、張りつめていた糸も一緒に切れた。
ベッドに身を投げ出し、目をつぶると、前髪を長い指でかき上げ、ふんわりと甘く微笑む敬が浮かぶ
「俺がその花粉症、治してあげますよ…」
偶然乗り合わせたエレベーターで、ふいに唇を奪った敬。
「女の人がキッチンに立つ後ろ姿って…そそられる」
あたしの肩に腕を絡め、後ろからギュッと抱きすくめた敬。