誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「大丈夫ですか?」
ラッシュアワーの電車の中、ナイトのように身をていして、あたしを守ってくれた敬。
「今日の彩さん、素敵です。思わず見とれてしまいます」
幻想的な間接照明の下、息も止まるくらいの熱い視線で、あたしの胸を震わせた敬。
「お目覚めですか?お姫様?」
まるで王子様のような眩しい笑顔で、ミネラルウォーターを差し出してくれた敬。
「昨日の彩、すんげぇよかったよ」
ふっと顔を傾け、耳元で甘く囁いた敬。
そして――
「俺、彩先輩のことが好です」
頬を赤らめながら、真っ直ぐに目を見て告白してくれた敬…
現実と幻の狭間で、敬の顔が、声が…次々に浮かんでは消えてゆく。
敬…
敬……
涙を滲ませ、いつしか彩は深い眠りへと落ちていった。