誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
嵐のような一夜が明けた。
熱いシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かしていると、いつの間にか身支度を終えた敬がネクタイを結びながらパウダールームに入ってきた。
「おはよう」
「…おはよ」
鏡越しに目が合うと、彩は思わず頬を染めてうつ向いた。
敬はふっと顔を傾け、彩の耳元で甘く囁く。
「昨日の彩、すんげぇよかったよ」
「バカっ…」
自ら求めるような言葉を口にしてしまった昨夜の自分が、消え入りたいほどに恥ずかしい。
「ねぇ、今さらなんだけど…一つ聞いていいかな?」
「…えっ」
「五年前…何で俺をやり捨てしたの?」
「や、やり捨てって…そんな、人聞きの悪い…
まぁ…確かに、そう言われても…仕方ないのかも、しれないけど…」