誘惑男子①~アブノーマルに抱きしめて~
「だって、一応カレもいたし…、年も三つも上だし…」
「そんなこと、はじめからわかってたじゃない?」
「うん…でも、一番の原因は……
怖くなったから……。これ以上、敬に抱かれたら…
その……淫らな、女に…なっちゃうんじゃ、ないかって…」
鏡越しに目を合わせた二人は、どちらからともなく顔を赤らめた。
「………俺、そんな理由で捨てられたの?」
敬は鏡の中の自分に問いかけるように呟く。
「そうみたい」
「そうみたいって…他人事みたいに…」
いくら若気の至りと言えど、あまりにも申し訳なくて、もう他人のふりでもするしか身の置き所がない。
「……ま、もう時効だし?許してあげるから、も一回言って」
「はっ?」
敬はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、ふいに後ろから彩の身体を抱きしめ、吐息混じりに囁いた。