笑わない女と俺
だってそうでもしなきゃ世界が汚すぎるのだ。

覚えている記憶。

遥か昔の記憶は、すでに風化しきっていた。
笑美なんて名前、今となってははた迷惑だ。
「あなたはいつも笑っていて…、何があっても綺麗な顔で笑って」

黙れ!。

黙れ、黙れ、黙れ!。
私は、笑う方法を忘れた。

私は、正しい生き方を忘れた。

私は、家族という存在があった事を忘れた。
私は、本当の私を忘れた。

本当の私?。

言い間違った。

私は、作られた私を忘れた。

皆、皆、皆、世界の全部、結局、心なんて誰かに植えられた偽物。
心は自分の中にあるだなんてまやかし。

私を作った人はどうやら、ゼンマイを回す方向を間違えたらしい。
だから私は狂ってしまったのだ。

今日の朝食もオニオンスライス。

食べないとこのつまらない人生が終わってしまうから。

身体の毒という毒全てを吐き出させる。

そのために食べている。

玉葱はだって毒消しの作用があるんだから。
窓から見える空は青いのに、私の目には真っ黒に見える。

世界なんて嫌いだ。
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