笑わない女と俺
受話器からは電話の保留の時の音楽。

確か、最近人気の女性ボーカルの曲だ。

といっても名前は浮かんでこないけど。

それよりも。

どうして、電話を代わってもらう時って、誰に電話した時でも異様に緊張してしまうのだろう。まあ特に、親しくもない奴に電話する時が一番緊張するけど。

そんな事を考えていると突然音楽が途切れる。

「なに?……」

エミの声だ。

ていうか第一声はもしもしお電話代わりましたとかさ、もっと常識的な代わりかたってあるんじゃないだろうか…。

まあ、こいつにそんなものを求める事自体が間違ってるのかもしれないけど。

「あ、えと、尾倉だけど、先生がお前に明日から文化祭の準備だから来るように伝えてくれって電話頼まれたんだけど…。」

「さっき、電話あった……」

さっきとはカトケンの事か?。

「あっ、そか…」

「用はそれだけ?……」
「あっ、えっとそうだけど…」

それにしても、無愛想、無愛想と思っていたが電話だと相手の顔が見えないだけ、その部分が際立つ。
こいつ、やっぱり正真正銘の変な女だ。

「そう…、それじゃ…」
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