笑わない女と俺
そうエミが言うとすぐに電話の切れる音がする。

おいおい、いくら何でも、心配して電話してきた同級生に、電話してくれてありがとうの言葉くらいあってもいいんでないかい?。

エミに人間らしい対応を初めから期待すると、すごく損する事が分かった。

もう期待するのはよそう。

直後、何故か不思議な気持ちになる。期待するのはよそうという事は、俺は少しはエミに何かを期待していたということだろうか?。

馬鹿な。

これまでの、少しのエミとの交流の中で、俺はあいつを知った気になっていたのか?。

可笑しい事実だ。

そうだ、たぶん、俺に理解などしようがない女。

そんな女を俺は心の片隅で、ほんの片隅かもしれないけど期待していた。

その事実、その思いのかけらはあいつに普通に笑って、喋って、そんな部分を求めて。

そんな普通の部分を求めていたなんて。

今の俺には知らないふりしか出来なかった。
ただ、少し胸が痛むことも。

思い過ごしだと、この時は思うしかなかったんだ。
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