笑わない女と俺
とにかく、まず上の部分の切り出しだな。

そう思っていると。

「あんた、何様のつもりよ!」

隣の女子の班から大きな声がする。

振り返って見てみると、隣のクラスの女子がエミに食ってかかっていた。

うわ。

やっぱり取り越し苦労じゃなかったということか。

俺は急いでエミの所に向かう。

「折角話掛けてあげてるんだから、ちゃんと返事しなよ!」

「ちょっと矢口やめなって…」
隣りの女子が止める。
「あんたは黙ってて!」
そう言うとエミの胸倉を掴む。

「あんた生意気なんだよ!」

そんな状況にもエミの表情は変わらない。

「はなして……」

エミは何の恐れも動揺もない声でそう言った。

「はなして……」

そしてもう一度、同じ口調で繰り返す。

「おい、やめろって!」
俺はやっとの事で間に入った。

「手を離せ!、おい!」
相手の女子の手首をつかむ。

だが、手を離す気配はない。「

「あんたも邪魔しないでよ!」

「やめろ!」

「こいつは前から気にくわなかったんだよ!」
「くっ!」

まさに一触即発の雰囲気。

だが、その空気はその一声で消え去る。

「なにやってるんだ!、お前たち!」
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