笑わない女と俺
その声の主はカトケンだった。

どうやら、遠くから見ていてこの状況の異様さに気付いたらしく、人混みをかきわけてカトケンが来る。

助かった。

正直、俺はそう思った。

気がつけば周りには沢山の野次馬という状況。

それはこんな状態では先生達にも気付かれるわけだ。カトケンが来る頃には胸倉を掴んでいた手は外れていた。

「お前達、何やってるんだ!」

「なにって、ただこの子と話してただけですよ」

カトケンはエミを見る。

「本当なのか、山月?…」

「………」

そんな問い掛けにも山月は返事もしない。

「おい、尾倉、お前は見てたんだろ?。本当に話していただけなのか?…

返事のない山月に聞いてもらちがあかないと思ったのか質問の矛先が俺に向けられた。

どう答えるものかと少し迷ったが、ことを大事にするべきでないと感じた俺はカトケンに状況を伝える。

「えっと、ちょっと門作りの事で隣のクラスの人ともめちゃいまして、それで、少し言い合いになっちゃっただけです…」

これで良かっただろうか?。

まあ、これならトラブルにはならないだろう。

「事情は分かったけど、同じ学年の生徒同士仲良くしろよ!」

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