笑わない女と俺
｢はーい…｣
｢………｣
隣組の女子は面倒くさそうに返事をして、エミは結局何の返事もしなかった。

｢それじゃ、先生は作業に戻るからな。お前達もしっかり自分の持ち場を頑張れ｣

そんな様子を訝しげに見ていたカトケンだったが、遠くから他クラスの担任に呼ばれて、そう一言残すと行ってしまった。

｢あとで覚えてなよ！…｣

隣組の女子に関してもそんな捨て台詞を吐くと俺達二人から離れていった。

｢山月、お前、どこか痛い所とかないか？。あるなら一緒に保健室まで行くけど｣

｢別に…、大丈夫……｣
｢そっか…、まあ、それならいいけど…｣

その言葉に一安心する俺。それにしてもこいつのポーカーフェースぶりには改めて驚かされる。
あの勢いのある怒気の塊みたいな言葉一つ一つを浴びても一切臆しているような部分を見せない。

こいつには今まで嬉しいという感情や、悲しいという感情や、怒りの感情や、そういった感情が欠落していると感じていた部分が多々あった。

だが、ここまで完璧にその全てを隠せる人間がいるのだろうか？。
俺は、他にそういう事が出来る人間は知らない。
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