笑わない女と俺
エミの横顔からは何も感じとることが出来ない。

「山月、お前さ、こんな事聞くのも何だけど、昔からそういう感じなのか?…」

「………」

「その、人と接するの苦手っていうか、一人が好きっていうかさ…」

「別に……」

たった一言の言葉には絶対的な拒絶が含まれていた。

その線を越えてくるなと言われているようだった。

「俺は学級委員なんだ。面倒だけどさ、もしも悩みとか人に話したいことあったら話せよ…」

「いい……」

やっぱりだ。私の心に近づかないで。

心に触れないで。

そんな声が聞こえる。
エミは、自分の心に境界を作っている。

その境界は、自分が傷付かないための境界。
こいつにとって、その壁の向こうは世界の終わりと道義なんだ。

だから、聞こえないんじゃない。

こいつは、はなから聞いていないんだって、耳を塞いでいるんだって思った。

俺じゃ、役不足なんだな?。

ただの学級委員という肩書きで近付けるような場所じゃない。

そんな偽善じゃ、こいつを癒してやることなんて出来ない。

そんな簡単なものじゃないって、その時に初めて知った。
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