笑わない女と俺
文化祭の準備はそれからも進み、ついに文化祭当日。

あれから、俺はエミに話し掛けていない。

きっと恐かったんだと思う。

あの日の拒絶が…。

所詮人間なんて、人の一番ヘビーな場所には入っていけない。

救うっていうと、何か変かもしれないが、あいつの中の闇に俺は少しずつ気付いたんだ。
その触れたしこりを上手く取り去れたら良かったけどな…。

そんなに、俺はあいつと近くなかった…。

そんな事実も、ただ現実と感じていた。

それでも、その闇に触れたいと思っていた自分がいたのも事実だった。

それって学級委員だから?。

それって単なる野次馬根性なのか?。

俺には自分の気持ちが分からなかった。

「おーい、尾倉!」

そんな物思いにふける俺の意識を、現実に引き戻したのはカトケンの声だった。

俺はクラスの催しとしてやっていた喫茶店の仕事にあたっていた。
「お前、ちょっといいか?、ここじゃちょっとなんだからさ」

そう言うと、廊下の隅に引っ張られていく。
「先生、なんですか?…」

「うん…、お前さ、午後はクラスの分担外れてたよな?。もし時間あったらさ、山月の様子見てやってくれよ。」
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