笑わない女と俺
笑わない女と犬
秋風が気持ち良いその日、放課後にクラスのアンケートをまとめるために居残りをした。
そのためか、帰りが遅くなり夕日はもう沈みかけだ。

俺は、有名先生のドラマに出てくる警官の如く河原の土手を自転車で疾走する。

「くそ、カトケン(担任)のやろー!」

思い切り恨み事を叫んでいると河原に人影を発見した。その途端に急ブレーキ。

「あれは…」

その人影に見覚えはあった。

ていうかこの前プリント届けたばかりだし。
「おーい、山月!」

自転車を土手に置いて近付いていくと、そこには段ボールと、中には小さな子犬が三匹。
「……」

呼びかけは完璧に無視でエミは犬を眺めている。

「それ、捨て犬か?…」
後ろから声を掛ける。
「知らない……、ていうか箱から出られないでジタバタしてるのただ見てただけ…それだけ…」

そう言うと立ち上がり土手に向かってゆっくりエミは歩きだす。

「おい、こいつらどうするんだ?…」

「知らない……、好きにしたら…」

その後は、振り返る事もなく、そのままエミは歩いていってしまった。

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