さくらいろ
「憂鬱だねぇ」
美夏もためいきと共に言葉を吐いた。
もう、このトマトに憂鬱と書いて、ゴミ箱に捨ててしまいたい。
テストなんてこなくていい。
「はぁ…」
相変わらずトマトをつつきながら、変わるわけがない現実から逃げたい気持ちでいっぱいだった。
「トマト、嫌いなの?」
美夏がたずねる。
「大っ嫌い」
食べる?
そう聞くと、
おまえが箸で突っついたトマトなんか食いたくないわ!
とか言われてしまった。
うん、ごもっとも。
「トマトジュースは?」
「いや…無理」
「トマトのスパゲティは?」
「だからっ、トマト全体的に無理だって!」
美夏が笑う。
うちも笑う。
…楽しいな。