さくらいろ


「憂鬱だねぇ」

美夏もためいきと共に言葉を吐いた。


もう、このトマトに憂鬱と書いて、ゴミ箱に捨ててしまいたい。

テストなんてこなくていい。


「はぁ…」


相変わらずトマトをつつきながら、変わるわけがない現実から逃げたい気持ちでいっぱいだった。


「トマト、嫌いなの?」

美夏がたずねる。


「大っ嫌い」

食べる?

そう聞くと、

おまえが箸で突っついたトマトなんか食いたくないわ!

とか言われてしまった。

うん、ごもっとも。


「トマトジュースは?」

「いや…無理」

「トマトのスパゲティは?」

「だからっ、トマト全体的に無理だって!」


美夏が笑う。

うちも笑う。

…楽しいな。
< 106 / 185 >

この作品をシェア

pagetop