さくらいろ
「彼氏、いるの?」
「え?」
「荻野」
………一瞬。
自分のことを聞かれたのかと思った。
一瞬だけうぬぼれて、またすぐに突き落とされた。
「さぁ…よく分かんない!」
ホントは100%いないと思ってるけど。
わざと言葉を濁した。
ホントは「いるみたいだよ!」ぐらい言ってやりたかったけど、さすがに嘘はたけない。
「ふーん」
神木くんはまだ外を見ている。
「…仲よさそうだね、あの二人」
…こんなこと言ってしまった。
ただの嫉妬だ、これ。