さくらいろ





「おはよ、荻野」


教室に入り自分の席にいくと、神木くんのほうから挨拶してくれた。

…じんわりと心があったかくなる。


「おはよっ!」


精一杯の笑顔で返事をする。


「今日は寝坊しなかったんだな」

「えっ!? そ、そんな毎日遅刻しないからっ!」

「さーどうだか」


神木くんはうちにちょっとした冗談を言ってくるようになった。

あいかわらずポーカーフェイスで。

だけど少し表情をゆるめて。

あの日みたいにお腹を抱えて笑うようなところはみてないけど。

よく目が細くなるようになった。


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