さくらいろ
*
「おはよ、荻野」
教室に入り自分の席にいくと、神木くんのほうから挨拶してくれた。
…じんわりと心があったかくなる。
「おはよっ!」
精一杯の笑顔で返事をする。
「今日は寝坊しなかったんだな」
「えっ!? そ、そんな毎日遅刻しないからっ!」
「さーどうだか」
神木くんはうちにちょっとした冗談を言ってくるようになった。
あいかわらずポーカーフェイスで。
だけど少し表情をゆるめて。
あの日みたいにお腹を抱えて笑うようなところはみてないけど。
よく目が細くなるようになった。