さくらいろ


「何かわかんないところあるの?」


「…へっ?」


「数学」



…あ。



「うん…ここ、分かんない」


別に普通にわかる問題を指してしまった。


…馬鹿だと思われたかな。

こんな問題分かんないなんて。


……馬鹿だっていうかな。

君に見とれてたなんて言ったら。


「教えてやるよ、俺そこ分かったから」



神木くんとの距離がぐっと近づく。


「…っ」


ふわりと、シトラスと汗の混ざったようなにおいがした。

多分…黄色いシーブリーズの。


運動部の、頑張ってる人のにおい。



神木くんはいろいろ教えてくれたけど。



自分の心臓の音しかきこえなかった。

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