さくらいろ
「荻野が手を針で刺しちゃって」
神木くんが先生に説明しようとする。
「神木がおどろかすからけがしたんですよー」
横から入ってくる美夏。
神木くんはちょっとめんどくさそうに美夏の方に目をやる。
うちはもうどう反応すればいいかわからない。
分かんなくて、血が出ていると言われた手をみた。
確かに出てる。
ぷっくりとにじみ出た血は、まるでトマトのようで、ふくれあがって今にも破裂してしまいそうだった。
赤く艶めくそれ。
嫌いなトマトとリンクしてさらに気持ち悪い。
思わず顔をしかめた。
「ちょっとー神木くんそうなのー?」
あいかわらず語尾が長いこの先生の話し方。
うちはあまり好きじゃない。
神木くんを見上げるようにしてそう言う先生。
「……すいません」
神木くんは悪くないのに謝る。
すごい、大人。
すごい、申し訳なくなった。