さくらいろ


「…指ごめん、吹部なのに」

申し訳なさそうに言う彼。


こんなの…

たいしたことないのに。


「ぜんぜん平気だよ!神木くんは授業戻ったほうが…」


静かな廊下にやけに響く声。


「違う、寺島に追い出された。ちゃんと手当しろって」


「美夏?…そんなの自分でできるのに」


さてはあいつ…うちのことばかにしてるのかな。

手当もできないと思ってるの?

ありえない。


「まあ…そういうわけだから、保健室一緒に行く」


…神木くんと二人だけになれるって。


「うん…あ、ありがと」


声、裏返りそうになっちゃった。

気づかれたかな?

…大丈夫かな?



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