さくらいろ


それから保健室で、神木くんは指を丁寧に消毒して絆創膏をはってくれた。


骨張った手はとても器用で。


窓から入る風に乗って、かすかなシトラスの香りが鼻をかすめた。



「はい、おわり」

「…ありがと!」


神木くんが近くにいて、手当てするのに手とか触られて。

すっごくどきどきしたけど…

今日はそれがなんだか心地よくて。


慣れ…なのかな。

この前は教科書みせてもらっただけで心臓壊れるかと思ったのに。


「…おまえさ」

「ん?」


ふわり。

また、シトラスの香り。



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