さくらいろ

杏里と胡桃



…とは言ったものの。


うちは神木くんと言葉を交わしたことがない。

ほんとうに、入学式に担任に促されてやる
「よろしくおねがいします」
の一言だけである。

あんなの半強制的。

話したとは言い難い。


「でも胡桃のためだし…」

「え、何が?」

昼休み一緒にご飯を食べていたクラスメート、美夏が聞いた。

「みかぁーちょっと助けて」

美夏は同じ吹奏楽部の仲間でもあり、胡桃ほどまでは行かないが仲のよい友達の一人だった。

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