さくらいろ
「しゃーねーな、ちょっとお前んち上がっていい?」
「いいけど…なんで?」
海斗くんはちらりとこっちを見て、大げさにため息をついた。
「お昼とかどーする気?自分で色々するのしんどいてしょ?」
「…あ」
「いーから、杏里は寝といて。俺今日午後から行くから平気だし」
……仮病、なのにな、
なんでこんなに優しいんだろう。
ねぇ、なんで?
授業より仮病の杏里が大事だって言うの。
どんどんこみあげる罪悪感。
自分のために誰かの時間を無駄にしている。
「…ありがと」
ただひたすら申し訳なく。
もう、その小さな一言しか出てこなかった。