さくらいろ



なんで胡桃に逢いたくないの?


なんで?

なんでこんなに、胸がきりきりするの。


わかんない、わかんないよ。



「…あんり?」



「…え?」


はっと、現実に戻った。

海斗くんがうちの玄関で心配そうにこっちを見ていた。


「どした?お前まじ大丈夫?」


「え…あ、平気。うん、部屋で寝てるね」


とっさに発した言葉は裏返り、小さく小さく響いた。


ローファーを脱いで、急いで部屋までの階段を駆け上がる。


急がなくちゃ。

急いで隠さなきゃ。



…この、目に溜まった涙がこぼれる前に。


海斗くんに見られる前に。




ばたんっ。



ドアを勢いよく閉めた。
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