さくらいろ


…体がこわばるのが分かった。

ゆっくりとドアの方向を向く。


「現国の教科書かーしーてー!」


ぴょんぴょん跳ねる小さな影。

ふわふわの髪がゆれる。


…胡桃。



ぎゅっ。

ほら、また胸が鷲掴みにされる。


胡桃のところまで、足早に歩いていって、


「…ごめん、今日うちも忘れちゃった」


嘘を…ついた。

ほんとは持ってる、現国の教科書。


「えっ…そっかぁ分かった」


胡桃のテンションは一気に落ちた。


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