さくらいろ
―――うわ…。
違った。
神木くんは少し身を乗り出して、杏里側のページに何か書いていった。
…ぐっと、二人の距離が縮まる。
神木くんの骨ばった手に群青色のシャーペンが握られて。
それが目の前にあって。
さらさらと文字を書いていく。
―――心臓が痛い。
どきどきと速く鼓動する。
頭にまで、その振動が伝わるみたいだ。
うるさい、心臓うるさい。
緊張しすぎて、もうどこも動かせない。
金縛りにあったみたいに。
「えー…ここは……の言い換えであるから…」
もう先生の声なんて全然耳に届かなかった。
「ありがと、ごめん」
神木くんは言って、もとの体勢に戻った。
…小さな声だったけど、ハッキリ聞こえた。
顔が熱すぎてどうにかなりそう。