さくらいろ
「………きっ、教科書ありがと、見せてくれて」
―――ほんとに早口だったと思う。
だって、神木くんが。
神木くんの方ちゃんと見て言おうとして。
顔、ちゃんと上げたら。
神木くんの方が先にうちのこと、ちゃんと見てて。
ばっちり。
目が合ってしまったから。
―――心臓がはねた。
でも失礼だから、すごい心臓うるさかったけど、今度は俯かないで頑張って目を見たまま言い切った。
言い終わっても、2秒ぐらい、顔をそむけないでそのまま頑張った。
長く感じただけで本当は1秒も経ってなかったりして。
「うん」
…ほら。
2秒頑張ったら、神木くんの表情がやっと見れた。
ちょっと笑った。
愛想笑いなんかじゃないと思う。
ポーカーフェイスがちゃんと緩んだ。