さくらいろ



…なんか。

死ぬほど嬉しかった。


この瞬間が。


今日寝る前に、このたった数秒の出来事を何度も頭で再生するんだろうな。


それで自然と顔がにやけて、

心臓がどきどきして、

また今日もよく眠れなくて、

明日もこの目の下のクマと一緒に登校するんだろうな。



「あ」


って、神木くんがうちの顔を見て言った。


「な、何?」

「……いや。風邪治ってよかったな」


こんなタイミングで意外なことを言われて、ちょっと拍子抜けした。


「うんっ、ありがと」


気が抜けたからか。

今度は普通に言葉を届けることができた。




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