上野さんと渋谷くん

それからしばらくして、市ヶ谷さんからメールがきた。

『たまには契約部女性陣と飲みに行かないか?』

どうやら、田町さんという契約部の女の人が、久しぶりに飲みに行きたい!と騒ぎ、最近ちょくちょくフロアに顔を出していた俺を指名してくれたらしい。
つくづく、顔は売っておくものだなあ。

ちなみに。

市ヶ谷さんには、言う前にもう全てバレていて、散々からかわれた。

「お前の愛情表現は犬なんだよ」

けどな、おそらく長期戦になるぞ?と、意味深に笑われた。言われる前から、なんとなく感じていたことだったけど、それを市ヶ谷さんに言われると、何となく複雑で。

俺が口を閉ざすと、「バーカ」と頭を小突かれた。

飲み会自体は、楽しかった。
もしかしたら営業部への文句とか言われるのか?と内心びくびくしてたんだけど、市ヶ谷さんや上野さんも、田町さんも大人で、仕事の愚痴や文句はほとんどなかった。

あんなに普段迷惑かけている目黒さんに関してでさえも、田町さんにかかると、

「最初っから爆弾抱えてると思えば、諦めもつくわよ」

の一言で一蹴だ。男前過ぎる。

上野さんは吹き出してたけど。


< 12 / 15 >

この作品をシェア

pagetop