はらり一枚、一滴
透明人間の手が、止まっていた。


そして、その視線は僕に向けられてはいなかった。


そのほんの少し後に


…ポタ


僕の頬に滴が一つ、

確かに落ちた。



震えながら、僕の首に添えられていた手が離れた。


体の重みもなくなった。


さく……さく…


透明人間は僕から離れていった。


僕は体を引きずり起こす。



さくさく……ドサッ


…透明人間


が、転んだ?座り込んだ?


どちらにしても、そこに居る。



「待って!」


僕は透明人間の元へ足を運ぶ。

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