今日も桜が綺麗に咲いています。
「過去を思い出してたんだ。そして俺が進む道がこれでいいのかって思ってたんだ。もしかしたら俺が歩んだ過去の道は無駄だったんじゃねえのかって思っちまってな。」
その短い言葉の中には計り知れないほどの思いが含まれていた。
私はそっと彼の髪の毛を伝う雫を拭う。
「あなたの過去に何があったかはわかりません。でも過去は変わらない。未来はわからない。そんな言葉があります。過去はどんなに思っても変わりません。それより、今ある未来を大切にしていきませんか?」
すると彼は大きく目を見開く。
そして少しだけ苦笑いを浮かべて微笑む。
「ああ、そうだな。」
「でも、あなたが歩んできて過去はきっとその時の一番最善の道を歩んできたんだと思います。どんな結果でも、無駄なんかではないんですよ。」
「すまねえな。他人のお前に心配かけちまったみたいで。」
私は首を横に振る。
「私が勝手に話しかけたんですから。それより送っていきます。おうちは何処ですか?」
「いや、俺はもう少しここで桜をみてえんだ。だから気持ちだけ受け取っておく。すまねえな。」
そう言って彼はまた視線を桜に戻す。
その横顔に流れる雫は涙なのか雨なのか私にはわからなかった。