その唇で酔わせて
明日は休みだから、お客がほとんどいなくなる閉店間際まで私は居残っていた。
今日も人気の彼にはたくさんの女の子が話し掛けていたな。
私も帰ろう…
彼の笑顔に癒されただけで来た意味があったから。
席を立とうとした、その時。
──コトン…
私の前に、乳白色で淡い黄色の液体が入ったグラスが差し出された。
私、こんなの頼んでない…
「あの、これ……」
「“マルガリータ”。
いつも刺激的なカクテルを頼む君に、僕からのサービスだよ」
顔を上げると、私だけを見つめる彼の優しい笑顔があった。
ドクンと心臓が大きく波打つ。
私のこと…覚えててくれたのね。