出会う前のキミに逢いたくて
「遠慮しなくてもいいのに・・・」

もう一度だけ、説得してみることにした。

これで最後にしよう。

あまりしつこいと彼もどうしていいかわからなくなるはずだから。

すると・・・

「遠慮とかそういうんじゃないよ。

今一番つらいのはマヤちゃんだろ。

昨日もほとんど眠れてないんだろ。

今は自分の体を大事にしたほうがいいよ」との返答が。

前田くんのおっしゃるとおり。

目の下にくっきりと隈ができていた。

やがて前田くんの目に涙がためる。

こぼれ落ちるのはもはや時間の問題だった。

「ありがとう・・・」

わたしはそこまで言うのがやっとだった。

やさしさで胸がいっぱいになったことや、だらしない自分への腹立たしさ、こんな過酷な現実をつきつけた神様への恨みがまざり、ガマンしきれずに声をあげて泣いてしまった。

「泣くのは早いよ。
まだそうと決まったわけじゃないんだから…」

マンモスのように屈強な前田くんも涙声になっていた。
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