出会う前のキミに逢いたくて
「ごめんね、そうだよね、まだそうと決まったわけじゃないものね」

あえて「死」をイメージする言葉をわたしたちは避けた。

その根底にあるものは、治る可能性も十分残ってるから使いたくないという強気な理由よりも、そうなることが怖いという弱気のほうが断然、濃い。

「じゃあオレ、そろそろ練習に戻るから・・・」

前田くんは涙をユニフォームの袖で拭うと、ぷいと横を向いて歩き出した。

大きな背中にもう一度「ありがとう」と無言の感謝を贈る。

けど、彼は1度も振り返らなかった。

やりきれない思いをシャットアウトするために、

わたしは「フー」と大きく溜息をついて涙腺からほとばしる濁流をぎゅっと抑えつけた。
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