出会う前のキミに逢いたくて
年齢的にはとっくにオジさんで、最近特におでこが目立つ。


でも、顔の輪郭が丸いのと、いつもニコニコしてるからか実年齢よりもずっと若く見えた。


年下の私が言うのも何だけど、人間的にも素晴らしい。


元アイドルといっても通る目鼻立ちのはっきりした奥さんと、その美貌を引き継ぐ娘が彼の自慢。

しかし当人は童顔でメタボ。

動物を擬人化したアニメを見るたび、熊とおじさんをミックスさせたらあんな感じだろうなと吹き出しそうになる。

いつも私たち従業員のことを気遣ってくれる。

時々飛び出すオヤジギャグはさすがに閉口だけど…。

「そういえばこの間、マヤちゃんのファンって人が現れたよ」

「はっ?」

お客さんのテーブルにホットコーヒーをお出しし、カウンターに戻ったときだ。

流しでカップを洗いながらマスターが思いがけないことを言った。

「あのう、わたしのファンってどういうことですか?」

< 105 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop