出会う前のキミに逢いたくて
もしかして近所迷惑だった?


これって、わたしに対するバッシングなのかな・・・


きっとそうだ。


「すみません、騒がしかったですか? 騒がしかったですよね?」


何はともかく謝罪の弁を述べた。


「そんなことないわ。
そういうつもりで言ったわけじゃないの」


といって彼女はあいているほうの手を大げさに振って否定する。


どっちが本音なのか、まだよくわからなかった。


「でも、ご迷惑をおかけしたなら申し訳ないです」


「違うの、本当に」


わたしは頭を下げつつ、彼女の表情を観察した。


どうやら、遠回しの抗議というわけではなさそうだ。


心の底からホッとした。


こんなときにご近所トラブルなんて抱えたくないもの。


「騒がしかったらホント、ごめんなさい」


「いやだ~、違うのよ。ごめんね、余計なこと言っちゃって…気を悪くしないでね」


恐縮しきった様子の彼女は何度も否定し、改札口へ歩き出す。


わたしはもう一度頭を下げ、見えなくなるまで後ろ姿を見送った。


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