出会う前のキミに逢いたくて
「具合はどう?」


ありったけの明るい声音で尋ね、ミネラルウォーターを喉の奥に流し込む。


「うん。大丈夫」


私からペットボトルを奪い、マサキが口をつけた。


正直、体調のことは聞きにくい。


わたしたちの世界では今最もデリケートな問題だから。


でも今日は思い切って追求しよう。


マサキ一人きりの問題じゃないんだもの。


2人で半分ずつ抱えるべき問題なのだ。


わたしとマサキで。


「いつ入院するの?」


すべてをなげうって野球に取り組むマサキにとって、体は基本。


つい最近まで、健康でいることが当たり前だった。


そんな彼に体調や今後の治療を尋ねるのはとても酷といえる。


だけど、逃げてばかりだと、いつまでたっても次のステージにいけないんだ。


マサキは何も答えなかった。


ただ静かに、暮れようとする夕日を眺めてるだけ。


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