出会う前のキミに逢いたくて
その様子をオレはカーテンの隙間からしっかりと監視したのだった。

彼個人にはそれほど興味はない。

けど、もしかしたらマヤのこの時代の彼氏である可能性がゼロとは言い切れない。
(オレとはまったくタイプの違うキャラクターではあるけれど)

だから、昨日から今日にかけての行動をじっくりとチェックさせてもらったよ。

そういうわけで、オレの左隣には、クマみたいな毛むくじゃらのガタイのいい男。

で、反対の右隣には愛するマヤが住んでいる。

タイムスリップし、この時代に紛れ込んだ日の朝、オレは公園のベンチで、自分なりにじっくりと考えた。

1年前にタイムスリップした理由を。

SFの世界なんかじゃ、たいてい、タイムスリップするのには大きな大きな意味がある。

たとえば、かつて死んでしまった恋人を助けるため。

あとは、亡くなった家族にもう一度会いたい。

そのほかでは、悪人をこらしめるため、悪人がモンスター化する前の時代にさかのぼってやっつけようとするが、悪人が先回りしていて全面対決・・・みたいなひねったものとか。

とにかく、フィクションではそういうきちんとしたモチベーションをもって過去に戻ったりする。

オレ自身にもあると思った。

過去のさかのぼる深くて重要な動機。

それが何なのか、脳をフル回転させて、必死で考えた。

で、出した結論がこれだ。

1年前、マヤはまだ無垢なバージンだった。

恋人はいるけれど、日記を信じるならば、二人はまだ男女の関係にいたってはいない。
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