出会う前のキミに逢いたくて
傍から見たら、オレは単なる心の小さい、嫉妬深い男ということになる。


器の小さな小心者。


けど、果たしてそうだろうか。


オレの立場にたったら誰だって思い知ると思うよ。


オレはすでにマヤに惚れこんでる。
(マヤはまだオレのことを知らないわけだけど)


なのに、一ヵ月後のクリスマス、彼女は別の男に自分のすべてを捧げる。


女の子のたぶん一番大事なものを、オレではなく、別の男が手に入れてしまう。


これを悪夢と呼ばずして何を悪夢っていうんだよ。


地獄に片足突っ込まされてるようなもの。


やきもちを焼かないほうがどうかしてるよ。


何とか阻止したいとすべての手を尽くすのが人ってもんだろ。


ここは中野くんに実力を存分に発揮してもらい、原田くん寄りの世論を吹き飛ばしてもらいたいものだ。


試合に敗れることを理由に原田くんとマヤの関係に亀裂が生まれるとは思わないけど、逆に原田くんに優勝でもされたら、ますます二人は燃え上がってしまう。


最低最悪のシナリオだ。


もしそうなったら、オレはどうなるかわからない。


ふと我に返る。


審判の右手が高々と上がった。

< 130 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop