出会う前のキミに逢いたくて
しかもありがたいことに、そのレースの1着と2着にきた馬の名前がすごく特徴的で、競馬に明るくないオレでも記憶していた。

まとまったお金を手に入れると、去年秋にマヤが住んでたアパートを探し出して、あいている106号室に飛び込んだ。

財布に保険証があったので戸籍も住民票も簡単に手に入った。

オレと出会ったころ、マヤはもうここを越していたから遊びに来たことはなかったけど、あらかたの住所とアパート名は知ってたから。

ここならば完璧。いろいろと都合がいい。

マヤをすぐ近くで観察できるもの・・・って、オレはストーカーかよ!!
量販店で買った安物のテーブルにノートを広げた。

マヤの行動を細かく記録した極秘メモだ。

マヤは本日、午前10時に部屋を出て、アルバイト先の喫茶店に向かった。

実はさっき、バレないように(といってもこのとき、オレとマヤはまだ出会ってないからバレるはずもないんだけど)帽子を目深にかぶり、喫茶店まで尾行してきたところだ。

道中でマヤはずーっとスマホを耳にあてていた。

おそらくこの時代の彼氏ということだろう。

当然オレは激しい嫉妬の炎を燃やした。

尾行がてら、何度も何度も道端の石ころを蹴って、精神の安定を保ったよ。
そのうち、蹴る石ころがなくなったほどだ。

まあとにかく、106号室を拠点にマヤを徹底的に見張るぜ。

で、いずれはチャンスをつかんで、二人が別れるように仕向けるのだ。
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