出会う前のキミに逢いたくて
「野球の神様って本当に存在するんですね。


神様が最後の対戦相手を中野にしてくれたんです。


粋な計らいってやつですよ」


オレはただ黙ってペンを走らせた。


「けど、野球の神様だからといって、100%気がきくとは限らない。


だからボクは負けたんです」


自嘲気味に笑う。


物音一つしないグランド。


やがて、ベンチと通路をつなぐ扉が音を立てた。


入ってきたのは広報担当者。


「すみません、そろそろ時間なんで…」


自分の腕時計と、きょとんとするオレの顔を交互に見ている。


無情のタイムアップ。


「お忙しいところ、時間を割いていただき、ありがとうございました」


ノートをバッグに放り込み、立ち上がった。

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