出会う前のキミに逢いたくて
マヤの声は怒りに満ちていた。


「ちょっとぉ~、昨日はどうしたのよ!? 何も言わないで急に帰っちゃって…」


涙が出そうになった。


「ごめん。悪かったよ」


記憶を辿る。


日曜日の夕方、マヤはスーパーへ買い物へ。


オレは彼女のアパートで留守番。


ショパンのCDを聞きながら。


二人で仲良くカレーを作り、夕食を共にするはずだった。


ところが、つまらない嫉妬で逃亡。


マヤには過去に彼氏がいたとか、そんな小さな問題で落ち込み、部屋を飛び出した。


オレと出会う以前。


彼女が深い深い悲しみに打ちひしがれていたとも知らずに。


オレはなんというアホな男なのだろう。
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