出会う前のキミに逢いたくて
20××年夏

記念日

閉店30分前。


「スマホもあるんだけど、しっかりしたカメラがほしくて。
動画が撮れるやつね。
そう思ってデジカメを買いたいんだけど、いいのないかしらねえ」


カーディガンをはおった高齢の女性が尋ねた。


後ろには旦那さんとおぼしき男性。


彼はお酒を飲んでるのか、頬は赤みを帯びていた。


二人とも上品な雰囲気を醸し出す。


夜のデートを楽しんだ帰りなのだろう。


「でしたら、たとえば、こういうのはどうでしょうか?」


とりあえず売れ筋商品をプレゼンした。


信用のおけるメーカーの製品であること。


比較的、操作が簡単であること。


その上、丈夫で、落としても少々のことでは壊れないこと。


そんな中にあっては値段もお手頃。


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