出会う前のキミに逢いたくて
「・・・あ、ありがとうございます」

つい、声が上ずった。

ゴミの集積所はアパートの門を出て右に向かってすぐ。

既に不燃ゴミがうず高く積まれている。

オレが目指すコンビニはその反対側だ。

門を出て左手にある。

とりあえず外の空気を思い切り吸い込む。

クリーム色の雲に覆われた空。

勢いを失いつつある木々の葉っぱ。

誰もをセンチメンタルにさせる夏の終焉。

頬を撫でる秋風が、心地良くもどこか切ない。

涙もろい人ならこの気候をおかずに泣けるのかもしれない。

このタイミングでオレたちは別れるはずだった。

「ではどうも」

小さく会釈して、体を左へ傾けた。

ところがその直後、彼女の意外な一言が背中に突き刺さった。

「そうそう、あなたのお隣の部屋に、若い女の子が住んでいるんだけど・・・」

『おいおい、この人魔女なのか!?』
魔法をかけられたみたいにピタリと動きが止まる。

アナタの言う若い女の子ってマヤのことですか?

オレは押し黙って、話の続きを待った。

いや、部屋の配置を考えるとマヤ以外にあり得ない。

「その子ってね、よく男の子を連れ込むのよねー」
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