出会う前のキミに逢いたくて
それからしばらくの間、前田くんはマサキのピッチングを絶賛した。


テレビの前で何度も「よしっ!」と叫んだそうだ。


本当は球場に応援に行きたかったけど出張で叶わなかったそうだ。


彼は電機メーカーの営業をやっていた。


前田くんの話が一息ついた頃、私は切り出した。


「あらためて不思議だなぁって思うことがあつてさ」


「不思議って?」


「電話よ。マサキの病気のことを知らせてくれた電話」


「確かに。オレもあのときは誰なんだろうって不思議で。部員ひとりひとりに電話したのおまえかって聞いちゃったよ」


「部員なわけないでしょ」


「なんで? 部員は毎日マサキの様子を見てるんだよ。顔色が悪いとか、体のキレが悪いとか、そういうので察知したかもしれないじゃん」


「そう思ったらマサキに直接言えばいいじゃない」


「ああ、そうか」
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