出会う前のキミに逢いたくて
<シンジ>

オレは首が痛くなるほどかぶりを振った。


「人違い、人違い。会ったことなんて、ないですよ」


本当は一度会ったことはある。


駅前にある書店のスポーツ誌コーナーで。


だけどそれを持ち出すと、話がややこしくなる。


オレは尚もかぶりを振り続けた。


ダメだ。


マヤとの記憶は封印したのだ。


その蓋はどんなことがあっても開けてはならない。


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