出会う前のキミに逢いたくて
待ち合わせのファミレスでもアイツの表情は硬いままだった。


当たり前か。


視線が斜め下で固定されっぱなし。


だからせめてドリンクバーはアセロラドリンクをチョイスした。


いつもはコーヒーのブラックなんだけど、こんなときに黒い液体はなんだか縁起が悪い気がしたから。


もしもこの世に紅白の飲み物が存在したらたとえ別料金でも買い求めただろう。


あいつはオレンジジュース。


でもちっとも減る気配がない。


ショックでジュースすら喉を通らないんだろうか。


ビビってるのはオマエだけじゃないんだぜ。


いずれにせよ重苦しいムードはオレたちには似合わない。


オレは盆と正月とハロウィンが一緒に来たような明るい声音で話しかけることを決心した。

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