出会う前のキミに逢いたくて
「そういうシンジは自分の体にメス入れたことあるの?」


「美形をより高度に変えるために顔をいじったくらいかな」


「ウソばっかり。もしもそれが整形した顔だっていうなら、その執刀医こそヤブだよ」


「るせえよ」


「あと結構お金かかるらしい」


「いくらくらい?」


「たぶん―」


金額はオレの予想をはるかに上回っていた。


しかし動揺はおくびにも出さない。出せるわけがない。不安を抱えた張本人を前に。


アイツは沈痛な顔のまま、イスの背もたれに体を預け、手を頭の後ろで組んだ。


「あーあ、こんなことになるなら宵越しの金、持っとくべきだったな」と弱音を吐き出す。


「ホントだよ」オレは睨み付けた。


「こんなことになるならウン十万もするワンコ買わなきゃよかった」


「ホントだよ」


「こんなことになるならウン万もするカバン買わなきゃよかった」


「ホントだよ」


コイツ、ボーナスを使い切り、すっからかんなのだ。


「実家もカツカツみたいなんだよね」


眉間に皺をよせ、天上を見上げる。


「金のことは心配するな。オレが工面するから」


と、威勢のいいことをいってはみたものの残高はコイツとさして変わらない。




< 230 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop