出会う前のキミに逢いたくて
その一方で、好都合なこともある。

それはまず、住人が無防備であるということ。

ランクの高い建物ならば、コンシェルジュや管理人さん、警備員などが常時いて、怪しげな行動をとる輩はいないか、にらみをきかせてるのがふつうだろうけれど。

この程度の建物に住んでいると、どうしても危機管理能力が鈍感になるのかな。

おかげで誰にも疑われることなく、マヤの部屋のドアの前に、めでたく小型マイクを仕込むことができたのだった。

秋葉原で購入したものだ。

・・・おいおい、これじゃ本当にストーカーじゃねえか・・・

しかも、この時代、オレとマヤはまだ出会ってない。

面識のない隣人が隠しマイクを仕込んだと知ったら、確実に通報だろうな。

カメラじゃないだけ、まだマシだろうか。

昨夜の丑三つ時。

すべての部屋の電気が消えたことを確認した上で、マイクを仕込んだ。

額や脇にいや~な汗をかきながら。

マヤはその夜11時に帰宅。

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